元プロ野球選手の高森勇旗さんと共同で連載しているスカイマーク機内誌の旅エッセイ「ユウキが行く。」
遅ればせながら、5月号のエッセイについてご案内します。
5月号のテーマは「コミュニケーション」でした。
日本語が通じない海外の旅で、最も苦労することが多いテーマの一つですね。
しかし、不自由するからこそ、コミュニケーションの本質を体感することができたと思っています。
体感したことの一つ目は、「本当の気持ちは伝わる」ということ。
感謝、喜び、怒り、悲しみ、心地よさ、心地悪さなどなど。声、表情、身振り手振りなどで伝わることを、あらためて実感しました。
そこから強く感じたのは、「大切なのは言語能力ではなくて、伝えようとする気持ちなんだ」ということ。
下手でも、積極的にコミュニケーションを取ろうとする気持ちがあれば、相手も理解しようと努力してくれる。だから、なんとか意思疎通できることが多かったように思います。会話が下手だからといって、伝えるのを諦めたらそこで終わりですもんね。
さらに派生して気づいたのは、「本当に伝わるのは、本当の気持ちだけ」ということ。
つまり、本心を伝えようとすればバッチリ伝わる。でも逆に本心を隠して表面を取り繕っても伝わらない。
「伝わらない」というのは、一つは、言葉の助けなしには理解されないという意味。もう一つは、言葉としては理解されても、腹落ちしないという意味です。
体感したことの二つ目は、「伝わるって幸せ」ということ。
言葉が不自由な中で、「伝えたい」「理解したい」という気持ちがつながる。その結果、分かり合える。そんなときって、めちゃくちゃ嬉しいんです。
実は、分かり合えることそれ自体が、幸福の鍵なんだなと実感しました。
少し飛躍しますが、これらは動物とのコミュニケーションにも共通すると思います。動物にも、「伝えたい」「理解したい」という気持ちを感じることってありますよね。
さらに言えば、植物など、動物以外の生命とのコミュニケーションにも共通する部分があるように感じます。
植物も、愛情を注げば元気になるっていう話は、よく聞きます。僕自身もそれを体験しています。
もっと飛躍しますが、生き物以外のモノにも共通する部分があるような気がします。例えば道具類、家具、建物。さらには、岩、山、海、川などの自然物や風景そのもの。これらのモノとの間にもコミュニケーションが成立しているように感じることがあります。
そういったモノたちにもこちらの本当の気持ちが伝わっていて、それに対するリアクションもくれている気がするのです。
僕が写真を撮るときに、一番大切にしているのがこの点です。というより、自然の美しさに感動・感謝して、思わずシャッターを切った結果として、美しいと感じられる写真が撮れたことが出発点でした。そしてそれと同じことが人を撮るときも起きているのです。
そこには、「美しい」という言葉で表現しきれないような、被写体側からのメッセージというかエネルギーみたいなものが写し出されているように、僕には感じられます。