スカイマークの機内誌「空の足跡」に「ユウキが行く。」という旅エッセイを書いています。元プロ野球選手の高森勇旗さんと二人で、同じテーマについて、それぞれの旅エッセイを書く形式です。
2023年4月号のテーマは「この旅の初日」です。4月から始まる新年度にふさわしいテーマですね。
僕は、「自由への一歩」というタイトルで、世界一周の旅の初日にあった出来事について書きました。以下は、その記事のエッセンスないし補足です。
自由は心の中に
バックパッカーの一人旅は、自由そのものというイメージですよね。僕もそう思っていました。
しかし、本当の自由は、外から見たカタチではなくて、心の在り方でした。心の自由を奪うものにもいろいろありますが、「マインドコントロール」もその一つ。正確な定義ではありませんが、ここでは人が他人の心を支配して思った方向へ誘導する手法としてお話ししています。
詐欺・恐喝・強要の場合
マインドコントロールは、人の判断を捻じ曲げるという意味で、詐欺や恐喝・強要と共通します。このうち詐欺は嘘を本当のことと信用させて財産を奪う罪。また、恐喝・強要はいうとおりにしないと生命身体・名誉財産などに危害を加えられるという恐怖を与えて言うことを聞かせる罪です。この二つは犯罪としては区別されていますが、実際にはミックスさせて使われることが多いようです。
例えば、振り込め詐欺とかオレオレ詐欺として知られる特殊詐欺です。「あなたの子供が悪さをして捕まっている。すぐにお金を払わないと大変なことになるよ」という嘘は、親心につけ込んで恐怖心をあおります。急がせることで焦りも生みます。それで、普通であれば簡単に嘘とわかるような話でも、パニックに陥って信用してしまうわけです。
日常生活での心の自由
ひるがえって日常生活を考えてみると、程度の差こそあれ、似たようなマインドコントロールが日常茶飯事におこなわれているように見えます。例えば、「将来お金に困るよ」「老後は大変だよ」「いろんなリスクがあるよ」と不安を煽り、余計な保険商品、怪しい投資商品、過剰なグッズなどを買わせる場合。また、政治権力側から見ても、国民が不安を抱いている状態の方が、何かとコントロールしやすいでしょう。最近の流行病に関しても、必要以上に不安を煽り、一定の方向に誘導するやり方が目立ちました。それが正しいかどうかとは別の話ですが。
旅の初日と心の自由への第一歩
僕は、そういった、マインドコントロールの手法を知識としては知っていました。また、自分もそれに引っかかりやすい弱い人間であることを自覚もしていました。それでも、旅の初日、いとも簡単にコントロールされ、不本意なツアーを申し込みました。それによって、しばらくは痛いほどの後悔に苛まれました。しかし、そのおかげで、マインドコントロールの本質の一部を、知識でなく身体で知りました。そのことは、その後の旅で、心の自由を保つ助けになったと思います。
その意味で、旅の初日は、心の自由を得る歩みの第一歩でもあったわけです。