スカイマークの機内誌「空の足跡」に毎月、「ユウキが行く。」という旅エッセイを書いています。
月毎にテーマが出され、それに合わせて、僕と、元プロ野球選手の高森勇旗さんの二人が書く、それぞれの旅エッセイです。

天気は悪くない

8月のテーマは「雨」でした。
僕は、テント泊トレッキングでの二つの失敗談について書きました。
一つは、パタゴニアでテントを水没させたこと。
もう一つは、ペルーのマチュピチュへのインカ道トレッキングで、寝袋を濡らしてしまったこと。
その時は困ったけれど、結局、どちらもいい経験でしかありませんでした。

雨降りのことを「天気が悪い」と言います。
意味合いは違いますが、僕は、天気そのものが悪いわけではない。何かの都合が悪いだけだ。雨降りにもいいところがたくさんある。という意味で、「天気は悪くない」というタイトルをつけました。

さらに言えば、雨にまつわる失敗に限らず、旅にトラブルや失敗はつきもの。
ですが、たいていは何とかなるもの。そして、その経験の中にも喜びがあり、その経験全体が最高の学びになるものです。
だから、旅を続けるうちに、失敗を怖れる気持ちが薄れ、運命に身を委ねる覚悟のようなものが備わっていったように思います。

可愛い自分には旅をさせろ

これと全く同じことが、人の人生についても言えると思うのです。
生きていく中での失敗やトラブルは、その渦中にあっては耐え難い苦しみでしかないかもしれません。
しかし、「振り返ってみれば、いい経験だった」「あの経験があったから、今の自分がある」と思えることばかりです。
ただし、そう思えるようになったのは、生きている幸せを実感できるようになったここ数年のこと。
すなわち、仕事を辞めて自分の人生を自由に生きるんだと決め、それを実践するようになってから。
とりわけ、世界一周の旅を経験し、失敗もギフトであると腹落ちするようになってからでした。

「可愛い子には旅をさせろ」と言いますが、「可愛い自分にも旅をさせろ」だと思います。